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2024.07.01

Part2
氷点下の倉庫では
何が行われている⁉︎

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特集:簡単なようで簡単じゃない、“ずっと冷たい物流”の守り方

Part2
氷点下の倉庫では
何が行われている⁉︎

Part1では、生産者から消費者まで、低温を保ったまま運ぶコールドチェーン(低温物流)とは何かをご紹介しました。
低温を保ち続けるために、コールドチェーン(低温物流)の最前線ではどのような努力がなされているのでしょうか?Part2では、保管と運送を一手に担う物流センターの舞台裏に迫ります。

冷蔵庫約50万台分の冷蔵倉庫にいざ潜入!

今回潜入するのは、ニチレイロジグループの船橋物流センターです。

家庭用/業務用の冷凍食品から、アイスクリームやピザ生地のような温度管理が必要な食品など、約6,000種類の商品をお預かりしています。

船橋物流センターの冷蔵設備能力は、10万1,267トン。これは一般的な家庭用冷蔵庫(500ℓ)でいうと、約50万台分にあたります。

商品を預ける荷主様も多種多様で、関東圏を中心とした要冷蔵品・冷凍食品の物流拠点となっています。
全国に約80カ所あるニチレイロジグループの保管型物流センターの中でも、船橋物流センターは1番大きな拠点です。

“スピード命”の入庫作業

船橋物流センターには、それぞれ保管の温度帯や設備の異なる4つの棟があります。

広大な冷蔵設備能力を有しているとはいえ、収納できる量には限りがあります。
そこで、荷主様には2日前までに入庫予約をしていただき、倉庫内のどの場所に保管するのかを事前に決めています。

また、ドライバーさんには「トラックバース予約システム」から予約いただきます。こちらも当日接車バースで荷下ろしをするトラックの順番や、作業の段取りを事前に決めています。

入庫当日、船橋物流センターに到着したトラックは、まず予約照会をします。

どこから何を積んでやってきたトラックなのか、荷下ろしのタイミングは何時からなのかなど、入庫予定との整合性を確認します。

荷主様との窓口業務を担う佐々木は、「トラックバース予約システム」の効果をこう語ります。

プロフィール画像

ロジスティクス・
ネットワーク 
船橋DC 所長代理

佐々木 大

佐々木

船橋物流センターは関東圏のコールドチェーン(低温物流)の要であり、入出庫の多い物流拠点です。ホテルでいうチェックインのように、事前予約をすることでドライバーさんが入庫まで待機する時間を減らし、スムーズな荷下ろしを実現しています。

入庫の準備が整ったら、いよいよトラックは荷下ろしをする接車バースへ。荷捌き場と呼ばれるスペースに積荷を下ろしていきます。

荷捌き場は外気温よりも低い温度に保たれています。
しかし、トラックと荷捌き場の連結部分にはどうしても隙間が生まれてしまいます。

温度管理が重要なコールドチェーン(低温物流)において、外気との接触は大敵。

接車バースには外気の侵入を防ぐために「ドックシェルター」と呼ばれる密着装置を設置して、トラックの荷台と接車バースとの隙間をできるだけ埋めています。

さらに、隙間の上から外気侵入を防止するための毛布やエアタイトなどを置くことで、外気との接触を最小限に。商品の融解や品質低下を防ぐための工夫です。

荷物を荷捌き場に下ろした後は、すぐに検品作業に取り掛かります。

現場の作業員は専用のタブレットを持ち歩いています。このタブレットでは入庫する商品のデータを見ることができ、商品ケースに記載されているバーコードをスキャナで読み取ったり、タブレットで写真を撮影したりするだけで照合が済む仕組みになっています。他にも箱に異常がないか、目視でチェックしています。

船橋物流センターの中でも冷凍食品をメインで取り扱う棟で現場実務を取りまとめる中野は、商品とタブレットを交互に指差しながら検品を進めます。

プロフィール画像

東京ニチレイサービス
船橋事業所 所長代理
(2024年3月取材当時)

中野 拓也

中野

私が指揮する棟には、1日で約4,000パレット分の商品が運び込まれます。同じ日に入庫した同じ商品であっても運び込む場所が異なる場合があるため、商品名や数、保管する部屋などは入念に照合しなければなりません。また食品には賞味期限がありますから、お客様への納品は、先入れ先出しが基本。検品を通じて商品ごとの情報を把握することも心掛けています。

検品が済んだら、タブレットと連動した専用の小型プリンターで入庫データを小さな札状のシールに印刷し、貼り付けます。このシールを作業の各所でチェックすることで、ミスを削減しているんです。

検品が終わった商品は、エレベーターを使って上の階にある保管エリアへ。

船橋物流センター全体の物量コントロールを任されている萩原は「入庫作業はスピードが命です」と熱く語ります。

プロフィール画像

東京ニチレイサービス
船橋事業所 所長

萩原 正義

萩原

検品が終わったら、商品が滞留しないようにすぐに保管エリアへ移動させます。温度変化によって商品が品質変化を起こさないようにするためです。

ただ、荷捌き場では約120台のフォークリフトが動いています。スピーディーな作業を意識しつつも、常に安全第一で、周囲の確認は決して怠りません。

荷捌き場からエレベーターで移動した商品は、保管フロア担当作業員のフォークリフトへとバトンタッチ。いよいよ保管庫へと運ばれます。

いよいよ氷点下の保管庫へ…

保管エリア内は、いくつかの保管庫に分かれています。

船橋物流センターには4棟あわせて126個の保管庫があり、保管する商品に合わせて庫内温度が設定されています。

今回潜入したのは、家庭用冷凍食品を保管する保管庫。
入り口は分厚い扉で仕切られています。さらに扉の上部には、開閉によって庫内の温度が変化した際に自動で稼働する冷凍機と、外気が庫内にできるだけ入らないように空気で遮断するエアカーテンを設置するなど、徹底的に温度を保つ仕組みが施されています。

こちらの保管庫の中は、上下2段の棚となっています。棚の一つひとつには番号が振られていて、その番号がいわば商品の“住所”です。

入室後の作業時間は目安が定められています。これは保管庫内の温度変化を最小限とするためです。フォークリフトを運転する作業員には、素早さはもちろんのこと、商品を傷つけない丁寧さと正確さが求められます。

トラックから保管庫へスムーズに運び込む秘訣を、萩原は「作業員同士の密なコミュニケーションの賜物です」と明かしました。

萩原

検品が終わるタイミングを見計らって保管エリアの作業員と連絡を取り、保管エリアのエレベーター前で待ち構えていてもらうことですぐに保管庫へ運ぶことができます。結果、温度変化のリスクを最小限に抑えることができるんです。

さらにフォークリフトの運搬技術を磨くために、ニチレイロジグループでは毎年社内競技会を開催しています。一人ひとりが日々技術を磨き続けることで、スピーディーかつ丁寧な運搬を実現しているんですよ。

今回は、コールドチェーン(低温物流)の要の一つ、保管型物流センターで商品がどのように入庫・保管されているのかをご紹介しました。

商品が物流センターから出発するまでの様子は、【Part3 満杯にならないの? 冷蔵倉庫の謎】でご紹介します!

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