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2024.11.06

Part2 あなたの身近に迫る、物流の危機

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特集:サステナブルな物流への挑戦

Part2 あなたの身近に迫る、物流の危機

私たちの日常生活は、物流の進化とともにより便利になりました。
しかし今、“運ぶ”を担う物流業界に、大きなピンチが迫っていることをご存知でしょうか?

物流の進化をわかりやすく解説した、Part1も要チェック!

ドライバーの仕事は、運転だけじゃない?

注文したものがすぐに届く。
スーパーに新鮮な食材が並んでいる。
日常生活のよくある光景ですね。欲しいモノがすぐ手に入る環境を当たり前だと感じている人も少なくないでしょう。

現在、国内でモノを運ぶ際の主な手段は、トラックを使った陸上輸送。主要なエリア間を大型車両で長距離輸送する「幹線輸送」と、主要都市を中心としたエリア内の集荷・配送を行う「地域内配送」。この2つを組み合わせながら、全国各地へとモノを運んでいます。

私たちの日常生活を縁の下の力持ちとして支えている物流ですが、長年ある問題を抱えていました。それは、ドライバーにかかる負担が大きいということです。

例えば、東京―大阪間の幹線輸送では1人のドライバーが約9時間運転して商品を運んでいます。その日のうちに自宅に帰る事は難しく、車中泊をするドライバーも少なくありません。

長時間労働は物流業界を含むあらゆる業種において、働く人の健康や人財確保の面でマイナスに働きます。働くすべての人たちのワークライフバランスを推進していくために、政府は動き出しました。

その大きな一手が「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、いわゆる「働き方改革関連法」です。
このうち労働基準法において、2024年4月からトラックドライバーを含む自動車運転業務は、時間外労働の上限が年間960時間に制限されることとなりました。狙いは、ドライバーの長時間労働を解消すること。1年単位の上限に加え、1日、1か月単位の拘束時間の上限や休息時間の基準なども細かく定められています。

これによってドライバーの労働環境は改善に向かった反面、輸配送事業者は物流業界そのものを揺るがすある問題と向き合っています。

それは、今まで通りの輸送距離、輸送量に対応できなくなる可能性があるということです。

人手が足りなければ、運びたいモノがあっても運べなくなってしまいます。そうした状況が続けば、当日・翌日配達などの宅配サービスが受けられなくなったり、生鮮食品が手に入らなくなったりと、生活者にも影響が現れるでしょう。 “当たり前”の生活が、当たり前ではなくなってしまうかもしれません。

こうした危機は「物流の2024年問題」と呼ばれています。
モノが運べなくなるリスクを避けるべく、現在、物流業界全体でさまざまな取り組みが実施されています。

乗務員が乗り換えるという新発想も…。5時間待機のギャップ

低温物流(コールドチェーン)に強みを持つニチレイロジグループにとっても、このリスクは他人事ではありません。現在、運輸部門を統括する馬場園は、2006年ごろから先輩方が尽力されてきた取り組みについてこう語ります。

プロフィール画像

常務執行役員
ソリューション開発本部
副本部長
兼 SCM推進部長
兼 運輸企画部長

馬場園 修三

「最初に取り組んだのは、中継拠点を活用するものでした。東京―大阪間の途中にある中継拠点で、ドライバーがトラックを乗り換え。来た道を戻ることで、トラック内の商品は目的地に届けられ、かつドライバーはその日のうちに自宅に帰ることができると見込んでいました。」

ニチレイロジグループは実際の運送を担っていただいている「ロジネット協力会」にご協力いただき、この方法が有効かどうか、まずは検証することに。

2006年、最初の試験日。大阪を出発して中継拠点についたトラックは、東京からの便を待ち受けます。しかし、待てど暮らせど到着せず……。

ドライバーの乗り換えができたのは、なんと予定時刻よりも5時間も後でした。
一体、なぜうまくいかなかったのでしょうか?

まずは出発時間を守る意識から変えていく

5時間の待ちぼうけが生まれた背景には、当時の運行体制に潜む、ある課題がありました。関西を中心としたトラックの配車を担当してきた、ロジスティクス・ネットワーク 運輸企画部の長田は言います。

プロフィール画像

ロジスティクス・
ネットワーク
運輸企画部
マネジャー

長田 幸雄   

「物流業界では長年、ドライバーが商品を一つひとつ手作業でトラックに積む『バラ積み』が主流。時間と手間がかかるため、出発予定時刻から遅れることが常習化してしまっていたのです。結果、小売店などの最終受け取り先へ予定通りに商品をお届けできず、ご迷惑をおかけすることもしばしばありました。」

出発予定時刻から遅れると、その後に待機している他のトラックにも影響が出ます。物流センター側で荷受けの準備が整うまで長時間順番待ちをしなければならないなど、出発予定時間を守れない状況が当たり前のように起きていたのです。

5時間の待機時間を削減するには、まずは拠点を決められた時刻に出発する「定時出発・定時運行」の考え方を浸透させなくてはなりません。

長田をはじめとする運輸チームは、すべての輸送ルートにおいて運行スケジュールを組み直すことに。さらには2014年以降、小ロットの商品でも手で運ぶのではなくパレットにまとめて一気に積み込む「パレタイズ化」を全社で徹底し始めました。

トラックに商品を運び込む作業時間の短縮と、「定時出発・定時運行」を守るという意識改革を進めるべく、各拠点にお願いして回ったのです。

こうした努力は、長い時間をかけて徐々に実を結びます。2016年には、ニチレイロジグループの幹線輸送サービスである「Nねっと便」の東京―大阪間を結ぶ輸送においては、すべての荷物をパレタイズ化して運ぶようになりました。

馬場園

約10年をかけて、多くの方々のご協力のおかげで『定時出発・定時運行』が浸透し、商品の遅延でお客様にご迷惑をおかけすることも減りました。着実に変革が進んだ今ならば、2006年に叶わなかったドライバーの乗り換え運用もスムーズに実行できるのではないかと、会社内で期待が高まっていきました。

10年以上の時を超え、ニチレイロジグループはもう一度検証に取り組むことに。
しかも、ドライバーの乗り換えよりも高い効果が見込める運用方式に、物流業界を先駆けてチャレンジすることとなったのです。

続きは【Part3 物流シーンを変える画期的な輸送法とは】(12月公開予定)をご覧ください

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