Part2では、物流業界に迫る「モノが運べない」リスクと、それを打破するためにニチレイロジグループが取り組みはじめた、ある挑戦についてご紹介しました。
Part3ではその挑戦の軌跡と、物流現場の今を追います。
物流業界に迫るリスクについては、Part2を要チェック!
トレーラーを“切り離し”、“使いこなす”新たな取り組み
私たちの日常生活を、縁の下の力持ちとして支えている物流。
日々、多くの商品がトラックに乗せられ、日本各地に運ばれています。
物流において使われる車両の中には、運転席部分(トラクター)と貨物車両部分(トレーラー)を切り離せるタイプのものがあります。
セミトレーラー
こうした車両は「セミトレーラー」と呼ばれています。物流事業者にとって切り離すことはメリットなのです。
この「セミトレーラー」を活用することで、ドライバーの負荷軽減、長時間労働の解決ができると、ニチレイロジグループは考えました。
これまで東京―大阪間は一台のトラックで走り抜け、商品を運んでいました。今回のアイデアでは「セミトレーラー」を使い、中継地点でトラクターとトレーラーを一度切り離してしまいます。そして積み込みが済んだ別のトレーラーと交換。ドライバーは来た道を戻ります。
商品は確実に目的地へ届けられますし、ドライバーの長時間労働の短縮にもつながります。さらに中継地点でトレーラーへの商品の積み下ろしを先に済ませておけば、ドライバーの積み下ろし作業が解消。トレーラーの付け替えだけ行えば良いため、運転以外の労働時間が大きく減らせると考えたのです。
2017年、ニチレイロジグループは「セミトレーラー」を切り離す運用方法を検証することに。2006年に実施した検証では、中継拠点についた大阪発のトラックが、東京からの便が到着するまで5時間も待機するという失敗も経験しています。
(2006年の検証の様子と改善の歩みは、「Part2 あなたの身近に迫る、物流の危機」をご覧ください)
パレタイズ化や「定時出発・定時運行」など、意識改革から徹底的に改善してきたニチレイロジグループ。グループ内外からの熱い期待に応え、検証は無事大成功。2006年と比べ、待機時間を大幅に削減することができたのです。
この結果に、トラックの配車を担当してきた、ロジスティクス・ネットワーク 運輸企画部の長田は喜びを隠せませんでした。
ロジスティクス・
ネットワーク
運輸企画部
マネジャー
長田 幸雄
「ニチレイロジグループ内で『定時出発・定時運行』が“当たり前”となるまでに、足掛け10年。ようやく浸透したからこそ、出せた成果でした。」
この成果を受け、ニチレイロジグループは実用化に向けて動き出しました。そのために、「トレーラー」を自社で保有するという大きな決断をしました。
例えばA社が牽引してきたトレーラーをB社のトラクターに付け替えるとなると、接続部分の規格の統一や、トラブル発生時、輸送商品の責任の問題など、クリアしなければならない課題が多々あります。そこで、ニチレイロジグループが自社でトレーラーを所有し、「ロジネット協力会」の各社に利用してもらうことでこれらの管理が可能となり、スムーズに運行できるようになるのです。
用意したのは国内最大級の大型トレーラー。一般的に長距離を運行するトラックは、パレット16枚分の商品を運べますが、このトレーラーはパレット24枚分の輸送が可能となり、その積載量は1.5倍となります。
物流業界の長時間労働を、本気で改善していく。ニチレイロジグループとしての決意でもありました。
「なぜ私たちが…」を変えた、改革の熱意
ハード面の整備を進めるとともに、今回の運用の鍵となる中継拠点では、最短時間でトレーラーの付け替えができるような改革に取り組みました。これまでドライバーがやっていた荷下ろし・荷積み業務を中継拠点の従業員が担うことで、ドライバーは運転だけに集中でき、ロスタイムなく運行できると考えたのです。
しかし、「当初は反発の声もありました」と、名古屋みなと物流センターで業務管理を担う吉田は振り返ります。
ニチレイ・ロジスティクス東海
運輸部
名古屋みなと物流センター
マネジャー
吉田 義寛
「通常業務に加えてドライバーがやっていた荷積み業務もやるとなると、これまで通りの時間の使い方や人員配置ではうまくいきません。また、荷積みには専門的な用具を使うため、ノウハウも身につけなければなりません。『なぜ私たちがドライバーの仕事まで…』といった声も少なくありませんでした。」
約1年という時間をかけて、吉田は従業員たちと対話する時間を設けました。そして、「物流業界全体を守るために、今、私たちが一歩踏みだそう」と訴えかけたのです。
そして、トラクターとトレーラーの切り離し作業を専門として担う人員や協力会社を探し出したり、拠点に切り離し専用エリアを設けたりと、従業員の不安を解消するために体制を整えていきました。
さらに、積み込みのノウハウを持つニチレイロジグループの協力会社「ロジネット協力会」のドライバーの方に名古屋みなとセンターへ講師としてお越しいただき、講習会を開催。積み込み時に使う専門的な装置の使い方を全員で学びました。
吉田
同じ頃、大型トレーラーを最大限活用するために、長田をはじめとする運輸企画部のメンバーは荷主様に協力を仰ぎました。
長田
現場とお客様、全員の熱意が一つとなり、2022年、東京〜名古屋〜大阪間で運行がスタートしました。
「SULS」で物流現場はどう変わった?
「トレーラー」を使いこなすこの取り組みは「SULS(サルス)」と名付けられました。
ニチレイロジグループの強みを掛け合わせることで「3つのS」を生み出し、社会や顧客に「3つのU」をご提供していきたいという想いが込められています。
「SULS」の名称は、「S&U logistics System」の頭文字から取っています。
「3つのS」
Speedy(よりスピーディーに)
Sustainable(持続可能な)
Solution(課題を解決する)
「3つのU」
Utility(より効率よく)
Usability(より使いやすく)
User Experience(高い体験価値)
「SULS」によって、現場はどのように変化したのでしょうか?
拠点での様子をのぞいてみましょう。
ドライバーが商品を積み下ろしする様子。パレットを押すジョルダーや商品を固定するラッシングベルトの設置も、講習会のおかげでスムーズに。
左は大阪方面から中継拠点へ到着したセミトレーラー。右にあるトレーラーの中には、東京方面から運ばれてきた商品が積まれている。ドライバーはここでトラクターの交換を実施。
トラクター部分を切り離す。
トレーラーを付け替え。
大阪方面へと再度出発!
導入試験では付け替え完了までに5時間を要しましたが、今では最短15分で出発準備が整います。「SULS」導入に向けて現場を一つにまとめ上げた吉田は、達成感を噛み締めました。
吉田
ドライバーに加え、荷主様からも「商品をお客様のもとに届けられないリスクを減らせてよかった」「カーボンニュートラルにも貢献している素晴らしい取り組み」と、評価の声が届いています。
さらに、運輸企画部にて関西発 関東・九州行きのトラック配車業務に取り組んでいる長田は、社内の業務効率化を実感しています。
長田
圧倒的な商品取扱量と全国各地にある自社物流拠点、さらには、30年以上にわたる全国の協力パートナ-様との強固なパートナーシップがあるからこそ実現できた次世代輸配送システム「SULS」。導入いただいている荷主様や活用エリアはまだまだ限られていますが、2024年4月には東北との幹線輸送でも活用されはじめており、今後も全国各地へ導入が広がっていく予定です。
「SULS」をはじめ、さまざまな取り組みに挑むニチレイロジグループ。一つひとつの取り組みが相乗効果を発揮し、持続可能な物流に大きく貢献していきます。ニチレイロジグループはこれからも物流改革に挑戦し続けます。
「SULS」について詳しくはこちらから
『SULS』実現に携わった社員のこぼれ話
常務執行役員
ソリューション開発本部
副本部長
兼 SCM推進部長
兼 運輸企画部長
馬場園 修三
スピーディーな物流は、新たな食体験の提供にも貢献します。例えば私の出身地、鹿児島県の名産品であるさつま揚げを、できたてのおいしさを保ったまま全国各地の皆様にお届けできるでしょう。「SULS」があれば、そんな未来も遠くないと信じています。
物流業界全体の進歩は、Part1にてご紹介しています。