totop
2025.05.21

Part2 「亜麻仁」で引き出す、牛肉の新たな魅力

この記事をシェア

特集:未来のために食べる牛肉『亜麻仁の恵み®️牛』とは

Part2 「亜麻仁」で引き出す、牛肉の新たな魅力

普段の家庭料理から、特別な日のディナーまで、
さまざまなシーンで登場する人気の食材「牛肉」。
そんな牛肉を、もっとおいしく健康に味わっていただきたい。

そこでニチレイフレッシュでは、
牛に与える飼料に亜麻仁由来の成分を配合して育てた『亜麻仁の恵み牛』を販売しています。

多くの研究機関や生産者の皆様と協力し、およそ10年もの歳月をかけて誕生した『亜麻仁の恵み牛』。
なぜ私たちが亜麻仁に着目したのか。亜麻仁で育てた牛肉の魅力とは。
その秘密に迫ります。

牛肉の魅力や、食肉文化の成り立ちをお届けするPart1もチェック!

「亜麻仁」の力で、牛に対するイメージを変えたい

皆さん、「亜麻仁」という言葉を聞いたことはありますか。

亜麻仁とは、美しい青色や紫色の花を咲かせる植物「亜麻」の種子のこと。
種子から抽出された「亜麻仁油」は、健康効果の高さから、近年注目が集まっています。

ニチレイフレッシュは、そんな亜麻仁由来の成分を飼料に配合して育てた『亜麻仁の恵み牛』を販売しています。

私たちが亜麻仁に着目した理由。
そこには、「地球にやさしい牛肉を開発したい」という思いがありました。

プロフィール画像

ニチレイフレッシュ
調達生産本部
畜産戦略部 部付部長
兼 調達生産本部 畜産戦略部
未来価値素材グループ
グループリーダー

近藤 武宣

近藤

牛をはじめとした反芻動物は、餌を分解・消化する段階で、CO2の28倍もの温室効果があるメタンガスを発生させるため、地球温暖化の原因の一つとされています。この課題に向き合うために、メタンガスの発生を抑制する効果が期待される亜麻仁由来の脂肪酸カルシウム※を使って、牛のネガティブなイメージを払拭しようとしたのが始まりでした。そこで、亜麻仁由来の脂肪酸カルシウムを、牛に与える飼料に含ませてはどうかと考えたんです。

※亜麻仁油は液状のため、牛が摂取しやすいようカルシウム塩と反応させ、粉末状に加工しています

そう語るのは、脂肪酸カルシウムを使って育てた牛肉や豚肉を全国各地のスーパーマーケットに販売している近藤です。

牛は、胃の中に溜まった水素(H)を排出するために、メタンガス(CH4)として体外に排出します。私たちは、牛に与える飼料に亜麻仁油の脂肪酸カルシウムを含ませることによって、このメタンガスの排出を抑えることを目指しているんです。

おいしさが一段とアップした牛肉が誕生!

さらに、彼らが亜麻仁に着目したのには、もう一つの大きな理由がありました。
それは、亜麻仁が「脂肪酸バランスを整える役割」を持っていること。

脂肪酸バランスとは、人の体に必要な必須脂肪酸の中でも、特に重要な「オメガ6系脂肪酸:オメガ3系脂肪酸」のバランスのこと。食事中の脂肪酸バランスを適切に保つことが健康維持に役立つとされています。

オメガ3系脂肪酸は、サバやイワシ、サンマなどの魚介類、亜麻仁油、えごま油などの食事から摂取する必要がありますが、多くの方にとってオメガ6系脂肪酸よりも摂取しにくい脂肪酸なのです。

例えば北極圏の先住民族であるイヌイットたちは、オメガ3系脂肪酸をたっぷり含む魚や魚を主食とする海獣を日常的によく食べるため、一般的なデンマーク人よりも心血管疾患による死亡率が低かったことが大規模疫学調査によって判明しています。こうした背景からもオメガ3系脂肪酸は健康価値の高い成分として注目されてきました。

そこでニチレイフレッシュは2009年、京都大学、太陽油脂株式会社、有限会社瑞穂農場、茨城県と共に、産官学連携で脂肪酸カルシウムを用いた牛肉の開発に挑戦することに。それまでも亜麻仁を用いた豚肉の開発に挑戦し、亜麻仁の魅力を誰よりも知っていたニチレイフレッシュだからこそ、亜麻仁が秘める可能性にかけることにしたのです。

『亜麻仁の恵み牛』の脂肪酸バランスなどのデータ分析やLCA※評価などにもご協力いただいた京都大学の廣岡先生は次のように語ります。

※LCA(ライフサイクルアセスメント)…製品やサービスの原料調達から、生産、流通、廃棄、リサイクルまで全ライフサイクルにわたる環境負荷を総合的に評価する手法のこと。

プロフィール画像

京都大学 大学院農学研究科
応用生物科学専攻
畜産資源学分野 名誉教授
農学博士

廣岡 博之先生

廣岡先生

これまで和牛の品質向上や家畜生産の最適化など、畜産学全般を幅広く研究してきました。私はとにかく牛肉が大好きなんです。畜産試験場の方からお声がけを受けたとき、「脂肪酸カルシウムを使えば肉質が柔らかくなって、もっとおいしい牛肉が実現できるのではないか」との期待もあり、プロジェクトの参加を決めました。

そこでまずは、茨城県の瑞穂農場で実際に牛を飼養いただき、亜麻仁を与える牛と、通常どおりの餌を与える牛に区画を分けて試験を行うことに。ニチレイフレッシュのメンバーが廣岡先生と待ち合わせをし、1台のバンに相乗りして現地に向かい、何度も視察と打ち合わせを繰り返しました。

廣岡先生

約8カ月かけて亜麻仁由来の成分で育てた牛肉を、初めて試食した時の衝撃は、今でも忘れられませんね。生産農家の方や弊学の学生、ニチレイフレッシュさん、みんなが口を揃えて「やっぱりおいしい! 普通の牛肉とは違いますね!」と言ったんです。通常の牛肉よりもずっと野生くささがなく、食べやすいことに驚きました。

たくさん活躍してくれた母牛を、最善の状態で送り出すために

さらに研究を進めるうちに、亜麻仁にはまだまだ別の可能性があることもわかってきました。それは、繁殖のために飼育される「経産牛」にとっても、良い影響があるということでした。

経産牛たちは、妊娠と出産を何度も繰り返すうちに、徐々に肉が硬くなってしまいます。搾乳量が減ることや、妊娠しづらくなることもあり、最終的には「廃用牛」としてミンチ肉やペットフードとして加工されてきました。

そこでメンバーたちは、「たくさん活躍してくれた母牛たちを亜麻仁で肥育し直すことで、より質の良い牛肉として届けられないか」と考え、まずは九州で経産和牛を肥育されている農家の方々に協力を依頼し、亜麻仁による経産和牛の再肥育に挑むことにしたのです。

2017年からは、農研機構や東北大学、北海道の経産乳用種肥育農家の方々と協力し、肉用牛だけでなく乳用種の経産牛についても、亜麻仁を使って再肥育する取り組みを始めました。

これについて、乳用種の経産牛を亜麻仁成分で再肥育するプロジェクトに携わってきた松原は「亜麻仁が経産牛に与えるメリットは、特に大きい」と話します。

プロフィール画像

ニチレイフレッシュ
調達生産本部 畜産戦略部
未来価値素材グループ
マネジャー
獣医師 博士(獣医学)

松原 夏月

松原

経産牛は、出産を繰り返し多量のミルクを出し続けることにより、肝臓に多くの負担がかかって健康状態が悪い牛も見られます。そのため、栄養素の効果的な消化吸収ができなくなり、食欲不振に陥ることや、最悪の場合、死んでしまうこともあるんです。亜麻仁成分は牛への負担を軽減しながら効率的にエネルギーを供給できるため、経産牛の健康にも良い影響を与えると考えています。

こうして亜麻仁を使った再肥育によって、生産者は資源を有効に使うことができ、農家の方々は大切な牛たちをより良い状態で送り出すことができます。さらに消費者の皆様に、よりおいしい牛肉を味わっていただけるようになりました。

そして、このおいしさを実現するには、飼育の仕方も大切だと廣岡先生は語ります。

廣岡先生

私は過去10年間にわたって、アニマルウェルフェアに関する研究にも携わってきました。アニマルウェルフェアとは、家畜にストレスを与えずに快適な環境下で飼育することを重要視する考え方です。近年では、牛になるべくストレスを与えずに育てることが、牛の成長や牛肉の品質の向上につながる可能性も見えてきているんです。

牛肉の本来のおいしさを味わっていただける、『亜麻仁の恵み牛』。生産農家の方からは、「たくさん活躍してくれたお母さん牛に、最後までおいしいご飯を食べさせてあげられる」などの喜びの声も届いています。

【Part3 『亜麻仁の恵み牛』がおいしく食べ続けられる理由】では、そのおいしさの秘訣と、生産農家の方々の思いをお届けします。

関連記事