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2024.03.01

Part2
電子レンジでつくる「冷やし中華」って本当に冷たいの?
サーモカメラで検証してみた

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特集:みんなが驚いた「冷やし中華」の秘密

Part2
電子レンジでつくる「冷やし中華」って本当に冷たいの?
サーモカメラで検証してみた

多様化する食生活の変化に合わせ、ニチレイフーズはさまざまな商品を世に送り出しています。なかでも2022年に発売した「冷やし中華」は、電子レンジを使って冷たく仕上がる、これまでにない商品です。でも、本当に冷たい麺がつくれるのでしょうか? その秘密を確かめてみました。

冷凍食品のトレンドはPart1からチェック!

本当に冷えている? サーモカメラで見てみると……

暑い季節に食べたくなる夏の定番メニュー、冷やし中華。店頭に貼られる「冷やし中華、はじめました」の文字を心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。

しかし、ご家庭で作るのはちょっと大変。湯を沸かして麺を茹で、冷水でしっかりと締め、色とりどりの具材を洗って切って盛り付けて……。キッチンに立っているだけでも汗が噴き出る日本の夏。できあがる頃には汗だくです。

ましてや、1人分だけを用意することは割に合わないと感じる方もいるかもしれません。

一食分の冷やし中華を、簡単に作れたなら…。
そんなニーズに応える夢のような商品の販売を、ニチレイフーズは2022年に開始しました。

(2024年3月 新発売商品)

(2024年3月 新発売商品)

パッケージを開けると、麺の上には氷が乗っています。タレ袋を取り除いたら、氷ごと電子レンジでチン。加熱後の麺にタレをかけてほぐし、別添えの具材をのせるだけで、あっという間に冷やし中華のできあがりです。流水で冷やし、麺を締める工程は必要ありません。

電子レンジで冷たい麺ができ上がるという商品形態に、SNSでは
「レンジで冷たいって意味がわからない」
「脳が混乱する」
「ちゃんと冷たい」
といった反応が寄せられました。

本当に、電子レンジで冷たい冷やし中華がつくれるの?
そこで、サーモカメラを使って検証してみました。

①袋から取り出した状態(加熱前)

②電子レンジで加熱した直後

麺の温度が上昇していることがわかります
溶け残った氷の周辺のみ、麺が冷えています 

③別添えのタレをかけた状態

冷たいタレをかけることで、温度が下がっていきます

④麺を混ぜ合わせた状態

溶け残った氷と冷たいタレで麺をほぐすと、麺がどんどん冷やされていきます

この、麺を冷やし切る技術こそが「冷やし中華」開発の肝だったと、商品開発部の奥村は言います。
「その名の通り、冷やし中華は冷えている料理です。つまり、レンジで加熱したあと、なんとかして麺を冷たく仕上げなければなりません。 “冷たい”という前提条件こそが、商品開発における一番のハードルだったんです」。

プロフィール画像

ニチレイフーズ
食品総合研究所 商品開発部
商品管理グループ
グループリーダー

奥村 尚

スタートは蓄積されていた過去の特許技術

日本では、共働き家庭や単身世帯、高齢者の増加などの社会背景を受け、家庭内での調理シーンにおいて素材から調理せずに加工食品や惣菜、または外食を活用する「食の外部化」が進んでいます。さらに、個々人で喫食時間や場所、 味・メニューの嗜好によって食べる物を自由に選べる風潮が広がったことで、家庭内での「個食」の需要が伸長していました。

また、「利用者ごとに異なる食事への対応」「人手不足をカバーしたい」といった福祉・給食業界のお悩みにも「個食」はぴったりフィットし、注目を集めています。

加えて、ニチレイフーズが「冷やし中華」の開発に着手した2020年当時は、コロナ禍真っただ中。家庭でも外食産業でも、一人分の食事を手軽に用意できる「個食」ニーズは追い風を受けていました。

こうした従来の範疇や業態の垣根を越えて拡大する「個食」のニーズを、ニチレイフーズでは “パーソナルユース需要”と捉え、商品ラインナップの充実を図ってきました。新しい商品を模索する中で着目したのが、冷やし中華でした。

奥村

冷やし中華って、チルド売り場にはあるのに、冷凍食品売り場には見当たらなかったんです。冷凍庫に常備でき、電子レンジ調理だけで食べたいときに手軽に食べられる冷やし中華があったなら、パーソナルユース需要にぴったりな新しい価値が提供できるんじゃないかと思いました。

しかし、冷凍食品売り場に冷やし中華がないということは、当然ニチレイフーズにとっても「冷凍」の冷やし中華は未だ世に出したことがない商品であるということ。

ましてや現代の冷凍食品は、電子レンジで加熱するだけで簡単に完成することが魅力。麺を冷やす・締めるという手間が増えてしまっては、冷凍食品として販売する意味がありません。

「手軽さ」と「冷たさ」を、どう両立できるのだろうか。
この商品、果たして実現できるのだろうか――。

解決のヒントは、約20年前に取得した特許技術にありました。

ニチレイフーズは2008年、「袋の中に麺とタレ、氷を⼀緒に⼊れ、電⼦レンジで加熱した後に混ぜる」という技術で特許取得をしていました。

氷は水と比べてマイクロ波を受けにくく、電子レンジで加熱しても溶けにくいという特徴を持っています。そのため、麺と氷を一緒に電子レンジで加熱すると麺だけが温まり、溶け残った氷で冷やすことができるのです。

しかし、当時は商品化には至りませんでした。なぜなら袋の中に、「麺」「タレ」「氷」全て一緒に包装すると、麺がタレに長時間浸かってしまい、お客様のもとに届く頃には見た目も食感も損なわれてしまうから。

そこで考えたアイデアは二つ。
一つは「袋ではなくトレーに麺を入れること」。
もう一つは「タレを個包装にして別添えすること」。
麺とタレを切り離すことで、それぞれが持つおいしさをキープするという狙いからでした。

麺とタレ、別添えにしたからできた、冷え切った麺

しかし、この二つのアイデアがすぐに成功した訳ではありません。

奥村

最初の実験の結果は、袋でもトレーでも、できあがりはほとんど同じ状態。見た目も食感も改善せず、これではとても商品化できない!と焦りましたね。そこから氷のサイズや量、トレーの形、タレの量など、一つひとつを何度も見直して検証を重ね、段々とおいしい状態に仕上がるようになっていったんです。

例えば「氷のサイズ」。
電子レンジで解凍した時にあえて少し溶け残るサイズにすることで、タレと麺を絡めていく過程で、溶け残った氷がちょうどよいタイミングで消えていく設計にしました。

タレも袋から出してさっとかけられるように、絶妙に凍らない調合を編み出しました。

また、麺とタレを切り離したことで、思わぬ効果もありました。

奥村

タレを別添えにして食べる直前に「後がけ」して混ぜる形にすることで、氷だけで麺を冷やすよりも、麺がしっかりと冷えることがわかったんです。食感や見た目も損なわれません。

こうして、ニチレイフーズが長年蓄積してきた技術力とノウハウによって、レンジで冷たく仕上げる新製法を完成させることができました。

(写真は2022年販売商品)

しかし、「冷やし中華」にはもう一つ超えなければならないハードルがありました。
それは「麺」づくり。

実は当時ニチレイフーズでは中華麺の商品は発売しておらず、麺づくりから検討しなければならなかったのです。

ニチレイフーズが突き詰めた、「冷やし中華」にぴったりな麺とは? そして麺の上で一際目を引くのは、煮豚!

隠れたこだわりは、【Part3 茹でたてのおいしさを冷凍で。「冷やし中華」の麺作りに迫る】でご紹介します!

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