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2024.03.01

Part3
茹でたてのおいしさを冷凍で。
「冷やし中華」の麺作りに迫る

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特集:みんなが驚いた「冷やし中華」の秘密

Part3
茹でたてのおいしさを冷凍で。
「冷やし中華」の麺作りに迫る

Part2では、電子レンジで冷たく仕上げる新製法ができ上がるまでの秘話をお伝えしました。Part3では、「冷やし中華」にぴったりな麺や具材を研究した、開発担当者の奮闘をお伝えします。

ゼロからスタートした商品づくり

「電子レンジで冷たい麺商品を作るって、一体どういうことなんだろう……」
商品開発担当の奥村から「冷やし中華」の構想を聞いた酒井は、驚きを隠せませんでした。

酒井は、企画された商品構想を実現する、商品開発を担当しています。原材料の配合や調理工程を詳細に決めたり、それを工場での大量生産に落とし込む、重要な役割です。

これまで20年に渡り、さまざまな商品の開発を手掛けてきた酒井にとっても、「冷やし中華」は未知の商品でした。

「私はそれまで麺製品を手がけたことがなく、そもそもおいしい麺は何からできているのか、どんな工程が必要なのか……手探りのスタートでした。文献も読み漁りましたし、冷やし中華を提供しているお店を何軒もまわって、理想とする冷やし中華の条件を固めていきました」。

プロフィール画像

食品総合研究所 商品開発部
第一ユニット
中華・スナックグループ
チームリーダー

酒井 信一

酒井が理想に掲げたのは、「つるつるとした喉越しのよい食感」と、「しっかりとしたコシ」を兼ね揃えた、まるでお店の生麺のような冷凍麺をつくること。

酒井は、ある行動に出ます。

「極秘プロジェクト」で、粉の違いから製麺機の切り刃までも追求

ニチレイフーズにとって麺商品は、これまで商品化された例が少ないカテゴリー。しかし、ニチレイフーズは家庭用・業務用に幅広い商品を取り揃えており、その中には小麦粉が使われている商品もたくさんあります。

春巻き、グラタン、今川焼……。

そこで、酒井は付き合いのある製粉会社などとコンタクトを取りました。社外秘のプロジェクトだったため、冷やし中華を作ることは言えませんでしたが、麺作りについて情報収集や検討を進めていきました。

酒井

粉の配合や生地をつくる温度など、文献を読んだだけではわからないことばかり。やっぱり、現場に行かないとわからないなと。ある業者さんが実際に製麺用の機械工場を見学させてくださり、麺づくりのいろはについても教えてくださったんです。文献だけでなく現場から学んだことで、プロジェクトは大きく前進していきました。

現場での学びを持ち帰り、すぐさまテストキッチンで試作。麺の太さや長さ、茹で時間など、冷やし中華にぴったりな麺を作るための研究の日々は、半年以上続きました。

特に苦労したのは、麺にしっかりとしたコシを出すこと。
コシは、茹で上がった麺の外側(表面)よりも、内側の水分量が少ないことで生まれます。その水分差は茹でた直後からどんどんなくなり、結果的に「のびた」状態になってしまうのです。

その点、コシの強い食感をキープしたまま茹でたてを急速凍結できるのは、冷凍食品ならではのメリット。粉の配合や、茹で上がりから麺を冷凍するまでの時間を微調整することで、コシの強い麺を作り上げていきました。

酒井

初めての挑戦ばかりで、正直大変でした。それでも『できたての麺のおいしさをお届けしたい!』。そんな思いで真摯に麺と向き合いました。また、8年前にもニチレイフーズの中で麺製品にトライしたことがありました。その時の検討データが残っていたことも功を奏しました。

学んだのは、麺の作り方だけではありません。

製麺機の機器メーカーにも訪問し、製麺機の仕組みや、麺を切る切り刃がメーカーごとにどう異なるのかなどを教わりました。一見、マニアックすぎる情報ですが、生産ラインをスムーズに立ち上げる際に大いに役立ったと酒井はいいます。

実際、聞き取りをした内容をもとに製麺方法を変更することで、タレとよく絡む麺がようやく完成しました。

そして、このあくなき探究心は、冷やし中華を彩る具材の検討でも発揮されました。

煮豚。そこに込められた思いとは

暑い夏でも食欲をそそる色とりどりの具材は、冷やし中華の大きな魅力のひとつ。

冷やし中華と聞くと、ハムやきゅうり、トマトを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし2022年の新発売に向け、セレクトされたのは煮豚、オクラ、錦糸卵、紅生姜の4つでした。

2022年販売商品 

2022年販売商品 

なぜ煮豚なのでしょうか?

商品設計を担当した酒井は、語ります。

酒井

有名店の冷やし中華は、煮豚やチャーシューでこだわりを出していたんです。やっぱり、ニチレイフーズの「冷やし中華」も、こだわりが詰まったものにしたい。手間はかかるかもしれないけれど、煮豚でそれを表現したかったんです。私が一から味付けを考えました。

煮豚は少しあまじょっぱく仕上げ、甘酸っぱいタレとのバランスを重視。

同僚から「今日も煮豚を研究するのか」と笑われたこともあったほど、何度も試作を繰り返し、自慢の味を作り上げました。

さらに、彩りからオクラを、味全体を引き締めるために紅生姜を。手に取っていただく方のことを思い、具材一つひとつを丁寧に選び抜きました。

「冷やし中華」の製造ラインに潜入!

プロフィール画像

ニチレイフーズ 山形工場
製造グループ
マネジャー

今野 保幸

今野

「冷やし中華」の生産ラインを立ち上げるために、山形工場に短期間で新工場を新設しました。今までにない冷凍食品を世に出していることは、工場のみんなにとっての誇りです。

さまざまな“食のカタチ”に応えたい

電子レンジで冷たく仕上がる「冷やし中華」の商品化。

さまざまなハードルのある商品でしたが、暑い夏でも冷やし中華を手軽に味わっていただきたいという思いがニチレイフーズを大きく動かしました。

これまでノウハウが少ない麺を開発し、電子レンジで冷たく仕上がるという付加価値をつけ、製造ラインを短期間で新設。「冷やし中華」はまさにニチレイフーズが総⼒を挙げて作り上げた一品なのです。

お客様の反応を励みに、発売後も改良を続けています。

これからもニチレイフーズは変わりゆく食のカタチやトレンド、好みをキャッチし、新しい価値をお届けしてまいります。

「冷やし中華」開発担当社員のこぼれ話

酒井

プロジェクトが始まってすぐ、まずはお店の味を勉強しようと街へ出たのですが季節は初秋。冷やし中華を出しているお店が少なくなっていく時期で、大急ぎで何軒もまわりました。みんなで食べて、タレの甘みや酸味のバランスなどを勉強しました。

奥村

氷のキラキラとした見た目はもちろんのこと、麺と混ぜ合わせた時のカラカラという音。この清涼感も大きな魅力で、私の推しポイントです。

Part1もご覧ください!

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