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2024.03.01

Part2
日本の食卓のために誕生した『純和鶏』

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特集:ニチレイが、「鶏」を一から育てている理由

Part2
日本の食卓のために誕生した『純和鶏』

古くから日本人の食卓に並んできた鶏肉。しかしこの先、今までのように気軽に食べられる食材ではなくなってしまう恐れがあります。リスクと隣り合わせの養鶏の未来を守るため、ニチレイフレッシュが選んだのは「自分たちで純国産の鶏肉を一から作る」という挑戦でした。

鶏肉の「トリ」ビア満載のPart1もチェック!

日本生まれ、日本育ち。“純”国産の『純和鶏』って?

私たちの食卓に欠かせない食材の一つ、鶏肉。
その鶏肉を、ニチレイのグループ企業であるニチレイフレッシュが養鶏から手掛けていることをご存知でしょうか。

その名も『純和鶏(じゅんわけい)』。
名前に“純”とつく通り、親の世代から日本で生まれ育った、純国産の鶏です。
(純国産、国産、地鶏の違いについては、【Part1 知ってる? 世界と日本の「鶏肉」事情】をご覧ください!)

日本で一般的に食べられる鶏肉の多くは、原種が生まれた欧米の好みにあった淡白な味わいであることがほとんど。しかし『純和鶏』は、適度な弾力感とジューシーでコクを感じるような旨味の濃さを併せ持ち、日本人が好む味わいとなっているんです。

その味わいは、飼育方法のこだわりも大きく関わっています。
一般的な食用鶏の養鶏期間が45日前後であることに対し、『純和鶏』は約60日以上。そのため背丈が高く、足が長いという特徴があります。さらに胸の周りがシュッと引き締まっていることから、モデルのような体型とも言われています。

現在は関東を中心としたスーパーや生協で手に取っていただくことができます。

では、なぜニチレイフレッシュが鶏を育てているのでしょうか。
それには日本の養鶏業に迫る、あるリスクが関係しています。

国産養鶏の未来を見据えて

スーパーでよく見かける「国産」と書かれた鶏肉。その約98%は、親鶏(種鶏)もしくはそのまた親鶏(原種鶏)をアメリカをはじめとする海外から輸入して、日本で育てているものです。

純粋な国産原種による自給率は、わずか数%。このような状況下で、もし鳥インフルエンザなどが発生して、輸入が停止したら……?

私たちの食卓から鶏肉が消える、そんな事態になりかねません。

2004年に国内で79年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生したことを受け、ニチレイフレッシュは立ち上がりました。国内で育種改良した純国産の鶏を育み、日本の食の多様性を守る挑戦です。知見があり親交も深かった種鶏孵卵会社の株式会社イシイとタッグを組み、昭和3年から国産鶏種の育種改良を行ってきた独立行政法人家畜改良センター兵庫牧場の協力のもと、養鶏事業に参入することを決めました。

親鶏として選ばれたのは、「小雪」と「紅桜」という、日本で生まれた貴重な種類です。産肉性を追求するブロイラーの歴史では淘汰された種ですが、おいしさの点では優秀で、日本人好みの食味を持ち合わせています。

養鶏地に選ばれたのは、岩手県の北東部にある自然豊かな洋野町でした。新たにニチレイフレッシュファームという会社を設立し、東京ドーム2.5個分にあたる敷地に鶏舎を建て、2007年に養鶏がスタートしました。

ノウハウはゼロからスタート

しかし、ニチレイフレッシュには養鶏のノウハウがありません。

実は1960年ごろに一度、採卵鶏の養鶏に挑戦した歴史がありましたが、当時のことを知る社員は残っていません。養鶏の経験を持つ社員はほとんどおらず、初めて尽くしの船出となりました。

その上、『純和鶏』は鶏の中でも臆病な性格で、強い日差しや急激な環境変化にも弱い。温度管理や飼料の配合、鶏舎の床に稲わらを敷き詰めるなど、成長にベストな環境を整えるための試行錯誤の日々が続きました。

「約60日以上」という養鶏期間も、試行錯誤の末に導き出された日数でした。

鶏肉は、養鶏期間が長くなればなるほど、肉質は繊維が多く硬くなる。しかし『純和鶏』の持ち味である「旨味の濃さ」を存分に出すためには時間をかけて育てたい……。

そんな絶妙なバランスを導き出すまでに養鶏場の従業員は何度も音を上げそうになりました。最適な養鶏方法・養鶏期間をつかめるまで、数年単位の歳月を要しました。

ニチレイフレッシュファーム
生産部 生産一課 係長
佐々木 隆行さん

 養鶏場の開設当初は、経験や飼育技術が乏しく、苦労の日々が続きました。一般的に流通しているブロイラーはきちんとした飼育マニュアルが確立されていますが、『純和鶏』ブランドは私たちしか生産していない品種のため、マニュアルなどありません。
 足が弱くて立てない事案が多発した際には養鶏場内の環境整備に奔走し、想定するサイズまでなかなか大きく育たなかった時には飼料の配合に試行錯誤するなど、一からマニュアルの確立に尽力しました。当時の苦労を上げるとキリがありません。それでも残念ながら、命を落としてしまった鶏も……。悔しい気持ちを何度も味わったからこそ、『純和鶏』に対する思いは年々高まっていきました。

ニチレイフレッシュのこだわりは、やがて毎日鶏たちが口にする飼料まで広がっていきます。飼料へのこだわりは、その後『純和鶏』の認知を広げる一つのフックとなりました。
Part3 養鶏が、耕作放棄地の解消につながった理由】でご紹介します!

鶏肉担当社員のこぼれ話

ニチレイフレッシュ 北川・濵﨑

私たちも養鶏場を訪問しました。その際、ニチレイフレッシュファームの方が『おいしさには自信がある。絶対にたくさんの人に味わっていただきたいんだ』と思いを語ってくれました。その時伝わってきた熱意は、間違いなく私たちの原動力になりました。

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